SAIL 創造することと記憶が大野さんの中で、深く関係していますね。
YOHEI
OHNO 自分としては、昔のものがすごく未来的に見えたりする感覚もあって、「過去」と「未来」が直線ではなく輪としてつながっていると感じています。これからどういうものを作っていくべきかを、今、「現在」からだけ考えるのではなく、これまでの「過去」、「現在」、明日以降の「未来」、そのすべてを並べて考えたい。それに、「未来」のことを考えることは、逆説的に「過去」を振り返ることでもあります。記憶もだんだんと成長して、誇大化されていきますし、そういう今ここにはないものの中に意外と「未来」につながるものがあると思う。今、ここにはないという観点から見れば、記憶も「過去」も「未来」も同じようなものだと感じるので、それらを集めていくうちに自然と「未来」に向いていく……そのような考え方なのかもしれません。
SAIL 今回、SAILと作り上げた“音楽室”の香りでは、なぜ「MUSIC CLASSROOM」をピックアップされたのでしょうか?
YOHEI
OHNO 2024SPRINGのコレクションも「ノスタルジー」をテーマにしていたので、個人的な記憶が呼び起こされるようなものになるといいなと考えました。SAILのみなさんとのディスカッションで、フックになるような、ちょっとクセがあったり、ある種バットテイストだったりする方向性が面白いという話になって。それで、不思議と懐かしい香りってどういうものだろうと考えたら、「音楽室」、「映画館のポップコーン」、「友達の家」などの匂い、といくつかのアイデアが出て、その中で最終的に音楽室にたどり着きました。みんなが好きな香りを作るというのは、普段の自分がやっていることとは違うと思ったんです。今回、調香してくださったパフューマーの山藤陽子さんは、タバコの香りを作られたこともあるという話をされていたので、きっといい感じの音楽室の香りにしてくれるのではないかと想像しました。それと、なるべく簡単には作れないような提案をしたかったという気持ちもありました(笑)。
それで、不思議と懐かしい香りってどういうものだろうと考えたら、「音楽室」、「映画館のポップコーン」、「友達の家」などの匂い、といくつかのアイデアが出て、その中で最終的に音楽室にたどり着きました。みんなが好きな香りを作るというのは、普段の自分がやっていることとは違うと思ったんです。今回、調香してくださったパフューマーの山藤陽子さんは、タバコの香りを作られたこともあるという話をされていたので、きっといい感じの音楽室の香りにしてくれるのではないかと想像しました。それと、なるべく簡単には作れないような提案をしたかったという気持ちもありました(笑)。
SAIL 大野さんの中で、音楽室にはどのような印象がありましたか?
YOHEI
OHNO 学校の教室ともまた違う、独特の匂いがあるという感覚が自分の中ではあったんですね。普段はあえてリサーチをせず、自分の中にある感覚を基盤にしていますが、今回に関しては実際に音楽室へ行ってみました。そこで感じたのは、子どもが持つ独特な甘い香りと古びた木の匂い。それをキーワードとして山藤さんに伝え、調香されたものを確認する、というプロセス、微調整を重ねて今回のルームスプレーが完成しました。
SAIL 最もこだわったポイントは何ですか?
YOHEI
OHNO 人によって音楽室の香りの印象は違って当たり前だと思いつつも、どこかで嗅いだことのある「共通の懐かしさ」を感じられるかどうかにはこだわりました。調香の最後の1割、ヒノキかヒバの香りで迷っていたのですが、単体で嗅ぐとヒノキは少し上品で心地よく眠れそうな感じ。ヒバは癖があって、若干キツい印象。香りでもYOHEI
OHNOらしさを表現したかったので、最終的にヒバを選びました。こだわった点といえば、そういう、ちょっとした“懐かしさ”のチューニングかもしれません。
SAIL 今回の香りは、コレクションの招待状を纏い、会場のエントランスを彩りました。そこで、どんな発見がありましたか?